一色に劣等感を抱いていた倉科は放課後に倒れている一色を見つけ、彼がSubであることを知ってしまう。第二性の欲求不満から起こる体調不良を治すべく、そこから倉科と一色は軽いプレイを始め──。
あらすじ
「俺とさ、やってみる?プレイ」Dom(支配的な)性であることにコンプレックスを抱く高校生の倉科は、堂々とした姿で生徒会長を務める一色をDomだと思い込み、一方的に劣等感を抱いていた。そんなある日、一色が校内で倒れているのを発見し、いつもと違う弱った姿に見過ごすことが出来ず介抱を行う。しかし、そこで一色にSub(従属的な)性であるという思いもよらない事実を打ち明けられ、倉科は勘違いで冷たい態度をとっていた自分の行動に罪悪感を抱くことになった。倉科は罪滅ぼしの意味も込めて、特定の相手がおらずDomとのコミュニケーション不足で体調不良を起こしているという一色に、自分と軽いプレイを行うことを提案し……。性に翻弄された青き日々──。パートナーと恋人の狭間で揺れる、センシュアルDom×Subユニバース、誕生。
ネタバレあり感想まとめ
この世界には四つの種類の第二性が存在する。リーダーシップを取ることを要求するDom、相手に尽くすことを要求するSub、相手に合わせてそのどちらの欲求にも適応できるSwitch、そのどちらの欲求も薄いNeutralに大きく分けられる。Neutral以外の三つの性は信頼した相手とのコミュニケーションが必要であり、それを怠ると体調不良や不安障害を引き起こしてしまう。優秀なDomに対して劣等感を抱いていた倉科は生徒会長を務めている一色に対して冷たい態度をとってしまう。その日、いつも通り帰ろうと廊下を歩いていると一色が倒れているのを見つける。第二性が理由と知ると、倉科は自分が持っているDom用の抑制剤を飲ませようとするも、そこで一色がSub性であることを知らされる。嫌いな人間の世話は焼きたくないだろ、と言われる倉科だが、自分と勝手に比較してひねくれていただけだと謝罪する。「俺とさ、やってみる?プレイ」と提案する倉科に「頼む。」と返事をする一色。
プレイはお互いの信頼関係が必要になってくるため、それが全くなかった二人は軽いものから始めていく。それから倉科は抑制剤の効きにくい一色のためにパートナーになることに。それから一ヶ月経っても自分の元にこない一色に何かあるんじゃないかと思う倉科。しかし、回数をこなして信頼関係を築くためにちょっとした雑談もしていた二人は徐々にお互いのことを知っていく。Sub性なのに生徒会長は大変だろうという倉科に、一色はお世話になった先生に頼まれたことやなりゆきでなったとしても投げ出したくない、と言う理由があることを知る。いつも通り放課後に会って、プレイをしようとすると倉科に自分の元にこない理由を聞かれる。自分の都合に巻き込んでしまっているため申し訳なさを感じており、回数を少なくしようとしていた一色。倉科は一色とプレイするのは嫌いじゃない、と告げる。二人はプレイの内容を少し進めることに今までは“Come”などの軽いものだったが今回やるのは“Kneel”。コマンドをこなしてくれたことを褒めると、その多幸感から一色はサブスペースに入ってしまう。目のやり場に困ってしまった倉科は自分が興奮して勃ってしまったことに気付き、遠ざけようとする。それに気付いた一色は、自分が巻き込んだんだからと倉科のものを舐める。終わった後、お互いに恥ずかしさで焦る二人。
一色が保健室で羽澄という保険医から検診を受けていると、いいパートナーが見つかったのでは?と聞かれる。倉科は恋人とパートナー同一派であるのに巻き込んでいるのが申し訳ない、と告げるとそのままお付き合いすればいいのでは?と提案される一色。倉科とのプレイに充実感を感じつつもいつかは倉科のためにも離れなければ、と思うように。倉科は、あれから一色のことを目で追ってしまうように。そんなとき、一色が健康管理の一環で健診のときに軽いプレイをしてもらっていることを知ってしまった倉科は嫉妬してしまい、先に教室に行ってるからと飛び出してしまう。用具室で合流すると、倉科は嫉妬からなのか「今のお前のパートナーは俺だよな?」と確認する。この気持ちはDomとしての独占欲なのか、それとも。一色とのプレイを夢で見てしまい、一方的に気まずくなる倉科。劣等感と独占欲を抱えたままコマンドを使うのが嫌だと感じていたが、一色が健診でちょっとあって遅くなったことを知る。検診でお世話になっている先生が一色を生徒会に入れたきっかけだと聞くと、嫉妬でコマンドを発してしまう。コマンド通りに動こうとする一色を傷つけたかったわけではない倉科は「しなくていい」と謝って教室を出て行ってしまう。
一色のことが好きなんだと気付いてしまう倉科。自分から離れなければ、と思っていた一色もいざ倉科が離れてしまうと寂しさを感じてしまうのだった。そこに通りかかった羽澄は若いんだから手を伸ばしてみてもいいんじゃないかと告げる。それから一週間、自分からも一色からも逃げてしまって合わせる顔のない倉科が廊下で俯いているとそこに一色が現れる。離れるべきだと思っていたが、離れていく倉科を見て嫌だと思ってしまったこと、理由も聞かずに離れたくないことを告げる一色。倉科は、もうとっくに一色のことをただのパートナーだと思えないこと、羽澄と一緒にいるのに嫉妬してしまうこと、パートナーではなく恋人として一色を独占したいことを伝える。そんな気持ちを聞いた一色は倉科にキスをする。想いの通じ合った二人は、プレイを含んだセックスをする。終わったあと、本当に俺でいいのか?と不安になる倉科に「──君がいいよ。倉科がいい」と返す。泣きそうになる倉科に、また一色はキスをするのだった。
Dom /SubユニバースはSM要素も少なからずあるため苦手な方も一定数いると思いますが、この本はプレイも激しくない軽めなものが多く、どちらかと言うと体よりも精神面での繋がりの方が大きいため読みやすい内容になっていると思います。あの一件がなければ決して交わることのなかった二人が、それをきっかけに信頼するようになってその感情がプレイや最中の雑談を通して恋に変わっていく姿が良かったです。
著者:オオタコマメ
レーベル/出版社:gateauコミックス/一迅社
発売日:2021/04/15