幼馴染の朔にずっと恋をしていた京介は、ある日朔が男とキスをしているところを見てしまい気持ちが爆発してしまう。付き合うことになった朔と京介だったが、朔にはあるトラウマがあって──。
あらすじ
子供の頃からずっと、幼馴染の朔に恋心を抱いていた京介。もう何年も朔ばかり見ているけれど、男に好かれるなんて迷惑なだけだとその気持ちをひた隠しにしていた。しかしある日、玄関先で見知らぬ男とキスをしている朔の姿を見てしまい、今まで押さえつけていた気持ちが一気に溢れてしまう。他の男に譲るぐらいならもう我慢しない、俺を好きになってほしい。そう朔に告げる京介だったが――!?
ネタバレあり感想まとめ
幼馴染の朔と同じ大学を志望している京介。「同じ大学って最初から決めてた」と言うと、「お前の冗談わかりにくいんだよな」と笑われてしまう。でも京介にとっては冗談ではなく、3個差の京介と朔は同じ学校に通うことができない。大学は四年制で少しだけでも一緒に通えるから一緒のところを志望したのだ。気がつけばもう10年朔のことが好きだった京介。でもきっとこの気持ちは迷惑をかけると思っていた。ある日、学校からの帰り道で朔が男とキスをしているのを見てしまう。昔、朔を女の子だと勘違いをしていたときに女の子ではないことを本人に謝られてしまったことがある。朔は何もしていない、とちゃんと伝えられたか心配になる京介。一緒に勉強して、疲れて寝てしまった朔の背中を興味本位で捲ると大量のキスマークが残っていた。起きて「男の背中じゃねぇーよなぁ」と声を掛ける朔。昼間の男なのかと確認すると「そうだよ、あいつに抱かれた痕」と何事もないように答えられる。ゲイを告白した朔に、思いが抑えきれず「好きだ」「俺は朔のために身を引いてたんだ、ほかの男のためじゃない。だからもう我慢しない、俺を好きになって欲しい」と告白する京介。まさかの返事は「俺もお前のこと好きだよ!」だった。晴れて両思いになった二人は恋人になる。クリスマスイブに二人は初デートをする。ピアス屋でピアスを見ていると、お揃いにしようという京介。京介には穴が開いていないため、朔が後で開けてやることに。買い物から家に帰った二人は早速京介の耳にピアスを開ける。開け終わると急にキスをしてくる朔。京介が「好きだ」と言うと、朔の中の何かがフラッシュバックしてしまったようで、京介を拒否してしまう。
それから2年、また知らない男に抱かれるようになる朔。同じ大学に通いながらもその時の理由は聞けておらず、「やっぱ無理だわ。元に戻ろう京介」と言われてしまいそのままになってしまっていた。大学で再会した朔は何もなかったかのように接してくる。その日の飲み会で酔った京介は、「どうやって諦めろっていうんだよ、まだこんなに好きなのに、好きだって言ってくれたのに俺が見ていた十年がわからない」と10年分の朔への想いを口にする。友達のトモキに付き添われ家まで送ってもらうと、朔と鉢合わせをする。京介を朔に預けたトモキは、「あんまり…そいつで遊ばないでやってください」と忠告をするが、「大丈夫、こいつと遊んだこと一回もねぇから」と返される。
朔に介抱される京介は、自分のどこがダメだったのかと言って朔に無理矢理キスをする。「俺は終われてないのに勝手に終わらせるな!」と怒鳴る京介に「代わりなんていくらでもいるだろ!!と返すと、京介は「そうだな、でも俺は違う。朔と一緒にするな」と言って寝落ちしてしまう。朔はそんな京介を「俺だってお前がいいのにどうしたって怖ぇんだよ」と抱きしめる。翌日サークルに顔を出した京介は昨日のことを心配される。トモキから朔のよくない噂を言われて止められはするも、諦められない京介。擦れる前の朔に執着してるだけに見えるから嫌われる一方だという京介を、昨日の様子から見て励ますトモキ。学祭当日、確認したいことがあるのになかなか朔と話せずにいた京介。フラフラ歩いていると、偶然朔と親しげに話す人の姿を見かけるが、なんだか朔の様子がおかしい。
朔は生まれる前に死んでしまった姉の代わりとして母親に望まれるまま家では女の子として振る舞ってきた。ある日、自分を女だと勘違いしている京介の前で「俺」と言ってしまったことがあった。咄嗟に誤魔化そうとしたが、「朔は朔なんだし好きにすればいいよ」と自分を肯定してくれた京介。自分が取り繕わずとも女の子だと思ってくれる京介といるのが好きだった朔。しかし、ずっと母親の期待に沿っていたのに二次性徴で男であるところを見られてしまい激しく否定されてしまう。自分がもし女ならありのまま愛してもらえたのかと絶望する朔が出会ったのは塾講師の原田だった。原田の誘惑は甘く、「女でなきゃ愛されないなんておかしいなぁ」「僕は今の君が素敵だと思うよ」と自分を肯定してくれる言葉にどんどん溺れていった。しかし、ある日原田が受付の女の人と結婚することを耳にしてしまう。「冗談キツすぎるよ」という朔に「君のことは好きだよ、でも未来は作れないかな」「君だって解ってただろ?」「そもそも僕は君と交際してるつもりはなかったよ」と冷たい言葉をかける原田。その原田が奥さんの母校ということで学祭に訪れていたのだ。奥さんは子供を抱えていて幸せそうで、目がみられず限界を感じていると「教授が呼んでたぞ」と京介に声をかけられなんとかその場から逃げ出せる。朔が困っていたことを見抜いて連れ出した京介は、さっきの人が誰かと聞く。答えないつもりでいたが、「朔が大事だから心配なんだ」と言われ「初恋の人」と答えて逃げてしまう。原田との件以降、自暴自棄になりたくさん汚れてしまった朔。高校生になった京介は声も低くなり背も高くなっていた。こんなに汚い自分の手をとって大事だからと心配してくれる。その時のことを思い出して一人研究室でうずくまる朔。すると、外から京介の声が聞こえる。
いくら声をかけても黙り込む朔に、「一度俺の気持ちに応えたのは嘘か?信じてた俺が間違ってただけなのか」「…わかった、もういい」という京介。自分が今京介に原田と同じことをしていると思った朔は急いで扉を開ける。ちゃんと話を聞きたいという京介に、自分が信じてたのに全部裏切られてしまったから、上部の言葉を信じてしまった自分が子供だったのもあるけれど京介に好きだと言われた時はまた裏切られるのではと怖くなってしまったと話す。最初から言って一人で抱え込まなければと返す京介は、「嫌われたんじゃないんだな」と安心していた。朔は改めて「好きだよ京介」「代わりなんかいない、俺だってお前しかいないから怖いんだよ」と告白をする。研究室でそのまま身体を重ねる二人。セフレともキスをするのかと最中に聞かれて萎えそうになるが、しないと言う朔の答えに煽られる京介。好きより大事って言ってと言う朔に「…大事だ」と返す。今でも母親と原田に裏切られたトラウマは消えない、三度目はきっと耐えられなくなってしまうから、自分を捨てていつかほかの女と目の前に現れたら京介のことは許せないだろう、と思う朔。桜並木の下を歩いている京介に「ありがとう」と言って二人は手を繋ぐのだった。
お互いに拗らせているといえば拗らせているのですが、今回は絶対京介のことが好きなのに過去のトラウマから自分が傷つくことを恐れて素直になれずめんどくさくなってしまう受けが印象的でした。自分が好きだった10年間、いろいろな男に抱かれているのを知っていながらその人をただ一途に思い続けることができる京介の強さに感服しました。
著者:百瀬あん
レーベル/出版社:G -Lish comics /ジュリアンリパブリシング
発売日:2017/07/28