初恋が牙をむく

弟と二人暮らしの晃生には、疎遠になってしまった忘れられない初恋の人・嵯峨がいた。しかしある日、芸能活動をする弟のマネージャーとして現れたのはその嵯峨だった──。

あらすじ

弟と二人暮らしの晃生には、忘れられない人がいる。
高校時代の同級生の嵯峨だ。
高校生の時に晃生は嵯峨とのキスを弟に見られてしまう。
罪悪感から晃生は嵯峨を遠ざけ、そのまま疎遠になった。
だが、それから十年以上経ったある日、
嵯峨は弟の仕事関係者として再び晃生の前に現れて…!?

ネタバレあり感想まとめ

芸能事務所にスカウトされた弟の南のために、事務所に赴いて挨拶をすることに。マネージャーとして現れたのはかつて南が突然話せなくなってしまった原因の嵯峨だった。高校時代、実家でキスをしているところを南に見られてしまったのだ。そんな相手と再会し、動揺が隠せない晃生と冷静な嵯峨。南がレッスンを受けているのを見学している間、自分のことを覚えているのか確認すると、「忘れるわけねぇだろ」「よくその話出せるなと思って」と冷たい言葉が返ってくる。実はあの後、罪悪感を感じた晃生は嵯峨を避け、連絡を全て無視して引っ越してしまったのだった。「その話もう出さないでください」と嵯峨に言われてしまい、少し悲しい表情を浮かべる晃生。南は泊まりで帰ってこないため、晃生は一人で抜くことに。今日再会してしまった嵯峨のことを思い出して「ずっと会いたかった」と涙を流すのだった。

高校時代、同性愛の映画についての雑誌を手に取るところを嵯峨に見られてしまった晃生。必死に誤魔化すと、慌てなくていい自分も同性愛者だと思うからと告白する嵯峨。可愛いと思ってた、同性愛者も意外と珍しくもない、と言われた晃生は嬉しくて思わず涙を流してしまう。その夢を見ていた晃生は涙を流していたらしく目が腫れてしまう。南はあの時のことを覚えていないようで、自分だけが変われずに取り残されていると感じていた。南を送り出した後、嵯峨から「南が怪我をした」との連絡が入る。急いで病院に向かうと、頭を包帯で巻かれた南がでてくる。南が病院に泊まる為、一度家に帰ろうとすると嵯峨が送ると言ってくれる。しかし、先日のことがあったため自分と二人は嫌だろうと断ると、行き過ぎた態度だったと謝られてしまう。南に過保護だから恋人もできないのではと聞かれ、モテなかったから色事はずっとなかったと答える晃生。そこに様子を見にきた南に「何話してたの?」と聞かれ、昔のことがフラッシュバックしてしまう。
家に帰り、病院に戻った晃生は、南から過保護だから恋人ができないのではと言われてしまう。自分で出会いを探す、と言うと美容師を紹介するから髪を切ろうと言う話になる。

翌日、事務所に現れたのは髪をさっぱり切った晃生だった。その姿を偶然見かけた嵯峨は、「似合ってます…すごく」と言う。家に帰った晃生はそのことを思い出していた。まさか会えるとも思っていなかったため嬉しく思っていた。テレビをつけると二人の出会いのきっかけになった、同性愛をテーマとした名作が放送されていた。映画に思わず泣いてしまう晃生。高校時代、嵯峨とこの映画を一緒に見たことがあり、号泣する自分を見ても惹かずにいてくれたことまで思い出してしまう。家に帰ってきた南は、晃生に甘え続けてしまうのはダメだから一人暮らしをしたいと願い出る。さらに恋人探しの続きを聞かれ、本当のことを話そうとするも言葉に詰まってしまう晃生。南は何か既に察しているようで、「言いたくなったらで、いいよ」と声をかけてくれる。南と離れて暮らすようになれば嵯峨と会うことも無くなってしまう。前に進むために、次に会う時が来たらお別れを言って最後にしようと思うのだった。

南のオーディションもいよいよ大詰め。当日になり、寝ている南を起こすとインターホンが鳴り嵯峨がきてしまう。南が風呂に入っている間に、晃生は高校時代に逃げてしまったことを謝る。嵯峨は何も悪くなかったのに、同性愛者として自分が周りと違うことや家族と向き合うことに怖くなってしまった、「あの時は…そばにいてくれてありがとう」と伝えると、「僕こそありがとうございます踏ん切りがつきました」と返される。南を送り出し、家で家事をしながら嵯峨とのつながりが完全に切れてしまったことに一人涙を流す晃生。寝てしまっていた晃生を起こしたのはインターホンの音。そこには南と一緒に出たはずの嵯峨がいた。「今しかないと思ったので戻ってきたんです」と晃生を抱きしめ、「家ちゃん、もう逃げないで」とかつての呼び名で呼ばれる。そこに南から電話がかかってくるが、嵯峨に押し切られてしまう。

嵯峨が南をスカウトしたのは晃生に似ているからであった。あの時の弟だと知ったのは後になってから。晃生と会うことになり、時が経過して姿が変わっているかも、他に男がいるかも、と覚悟していたが実際は違った。その晃生が今嵯峨の目の前にいて「俺嵯峨くんが好き」と言っている。言葉を塞ぐようにキスをした嵯峨は玄関で始めようとするが、「俺の部屋あそこだから…」と顔が真っ赤の晃生に誘導され、晃生の部屋で再びキスをする。10年以上の時を経て初めて繋がることができた二人。お互いに感傷に浸りながら身体を重ねる。仕事があると家を出ようとする嵯峨に「あと十秒だけ…」と抱きついていると、後ろからオーディションを終えた南が戻ってきてしまう。言葉に詰まる嵯峨の手を握り、晃生は自分が男の人が好きであることを打ち明ける。しかしそれは言われずとも南は気づいていたようで逆に動揺してしまう。本当に嵯峨でいいのかといじる南に釘を刺す嵯峨は、また連絡すると言って帰っていった。オーディションの結果、南は準主役に内定した。「お兄さんにも報告しないとね」と言う嵯峨に、自分で言ってくれてもいい、と南。晃生から過去に何があったか聞いたようで、「二回も野暮なことしませんよ」と言われる。駐車場で電話をしている嵯峨の前に、南から居場所を聞いた晃生が現れる。帰ろうとする晃生を引き留めて車に乗せるが、少しビビっている様子。「今度は絶対諦めないから」と晃生に言うと、「嵯峨くんの方こそ後悔したって知らないよ」と返される。座席のシートを倒し、お互いに「会いたかった」とキスをするのだった。

好きだった人から突然捨てられたにも関わらず好きだったから諦められずにいる気持ちも、自分が人と違うことへの怖さから覚悟が決められずに逃げ出してしまう気持ちも両方わかるからこそ、弟を通してその相手にもう一度会えたのはもう運命だと思ってしまうな、と感じました。告白するのは怖いことだけれど、南がすんなりと受け入れてくれたようにもしかしたらそんなに怯えなくてもいいのかな、とも思いました。

著者:英数字
レーベル/出版社:HertZ&CRAFT /大洋図書
発売日:2018/12/01

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