天涯孤独の比呂は、拾ってくれた職場のオーナー・楢崎に恋をしていた。脈ナシの態度に耐えきれずある日押し倒してしまうと、楢崎のスキンシップはなぜか加速してしまい──!
あらすじ
天涯孤独の比呂あやとは洋菓子店オーナーの楢崎千歳に拾われ、彼の店で働き始める。そして気付けば楢崎に恋していたが、彼は事あるごとに比呂を犬扱いするので全く脈ナシ。同居しているせいでいい加減に詰まった比呂は、ある夜、楢崎を押し倒してしまう。しかし、拒絶されるどころか、その日以降、楢崎のスキンシップが激しくなる。毎日のようにキスを仕掛けられ、楢崎の真意がわからず悩む比呂だったが──。
ネタバレあり感想まとめ
施設の出身で天涯孤独、仕事も無くなった比呂を拾ったのは胡散臭さ全開の洋菓子店オーナー楢崎。住む場所も給料も提供する、と言う条件から彼の店で雑用係として働くことに。さっさと出ていくつもりだったが、比呂は楢崎に惚れてしまい、出て行こうにもいけない状況に。そんな比呂の気持ちを知らずに肝心の楢崎は比呂を大型犬扱い。ある日、普通に仕事をしていると裏の方から聞こえてきた会話から楢崎が拾ってきたのは自分だけでないことを知ってしまう。多少なりとも楢崎にとって特別なのではと思っていた比呂は自惚れていたことにショックを受けて楢崎を待たずに帰宅する。そこに現れた楢崎を「飼い犬が飼い主の手を噛まないとでも?」と押し倒し、拒絶されたり殴られたりして全て終わらせるはずだった。しかし、楢崎の反応は想像と違い、いきなりキスをしてきた上に楢崎への好意も一緒に知られてしまったのである。
弱みを握られてしまった比呂だったが「飼い主に好かれたいなら飼い主が喜ぶことに精を出せよ」とのひと言で、自分のことを犬ではなく恋愛対象として見てもらうためにいつも以上に仕事を頑張るように。周りと積極的にコミュニケーションを取るようになったり、自分に仕事以外のことも覚えようとしたりする比呂に、周りの目も徐々に変わっていくように。そんな比呂を見た楢崎は、さらにスキンシップをするように。「俺はおまえが喜ぶことをしてやってるだけだよ」とこちらの気持ちを考えることなくキスをしたり同じ布団に入り込んできたりする。そんなとき、過労が祟って楢崎が倒れてしまう。見舞いに行くと、いつものように比呂をからかってくる楢崎に取り繕われているように感じた比呂は、楢崎に告げることなく店を辞めて出ていってしまう。
店に復帰してそれを知らされた楢崎は急いで比呂を追いかけて捕まえる。楢崎は比呂を捕まえると、どうしてからかうような態度をとったのか、自分が素直になれなかったことを打ち明ける。それを聞いた比呂は、そんな楢崎を愛おしく感じ、「そんな顔見せられたらあんたみたいなの放って出てはいけねーよ」と強く抱き締めるのであった。家に二人で戻り身体を重ねる。その後、比呂は一度辞めた店に楢崎の厚意で復帰し、また一緒に働き始めたのであった。彼らが付き合って三週間、比呂が誘っても楢崎はそれを避けて逃げるようになってしまう。同僚に気持ちにズレがあるのではと言われてしまった比呂はまた一人で突っ走ってしまったのではと思う。その頃楢崎は同じく同僚に比呂と付き合っていることがバレ、自分の努力という形で素直にならないとダメだと釘を刺されてしまう。合鍵を持っておらず楢崎との家の前のドアで帰りを待っていた比呂の前に楢崎が現れてこれは俺の覚悟だ、と家の合鍵を渡すのだった。その後、二人はまた体を重ねるのだが、いつもと違い今日は楢崎が頑張ってくれることに。終わった後も前の仕返しだ、と急に名前で呼び、「これからもよろしく、あやと」という楢崎と、幸せそうな二人のページで終わる。
この本は私が最初に購入した、思い入れのあるBL本です。本記事を書くために読み返しましたが、何度読んでもいいなと改めて感じました。比呂の好意を嬉しいと思う反面、両親にすら素直になれずに育ったため素直になることができずからかうような態度で取り繕ってしまう楢崎はとても可愛らしく、そんな態度を取られても諦めずに、認めてもらえるような人間になれるように努力を続けることができる比呂の意志の高さも感じることができました。一緒に収録されているお隣さんの短編BLも、比呂の20歳記念短編漫画もとても良かったです。
著者:桐式トキコ
レーベル/出版社:B’s-LOVELY COMICS/KADOKAWA
発売日:2016/12/15