だから理系が嫌いだ

予備校で教師をする篠田は、考え方の合わない先輩教師・篠田と衝突ばかり。しかし、時々窮地を救ってくれる篠田に抱く感情が憧れからだんだん変化してしまい──。

あらすじ

予備校で社会を教える篠田千歳は、勤務初日から、鬼講師と評される数学担当の中津に生徒への接し方を注意される。理詰めで容赦のない中津。篠田はそんな中津の考え方や言い方につい反発してしまう。けれど、時に窮地を救ってくれる中津は篠田にとって憧れの存在でもあった。そして、気づかぬうちに中津への感情は変わり始めて!?

ネタバレあり感想まとめ

 予備校の社会科教師として働き始めた篠田。不安なところはあったものの、生徒とも仲良くなれて安心していると数学担当の同僚・中津から生徒をあだ名で呼んだことを注意される。高校生は思っているより都合のいい子供で大人出ると言われてしまう。クラスの平均点も上がり、生徒からも信頼を得てきた今、自分の教育方針は間違っていないと思っていた篠田は、生徒に携帯の電話番号を教えてくれとお願いされてしまう。講師の仕事は勉強を教えるだけだから…と断りを入れると、「なにそれ急に講師ぶっちゃって」「調子乗んなよ頭悪いくせに」と急に暴言を吐かれてしまう。中津から言われた高校生は都合のいい子供で大人、と言う言葉を思い出し困っていると「篠田先生いじめてんじゃないよ」と中津が現れ、「俺達お前らの友達でもなんでもない」「仲良くなってもこっちにはメリットないし調子乗んなよ」と生徒に正論を浴びせかける。その子が予備校にこなくなることを心配する篠田に「やる気のない奴は来なくていいです」と切り捨てる中津。篠田は「中津先生の言う通りでした」と謝る。そんな篠田に「生徒を信じてあげてください、そのまま導いてやってください」「結果が出たらたくさん甘やかしてやってください」と励ましをくれる。

四年前、今働いている予備校で夏季限定の採点バイトをしていた篠田。いつになっても終わりが見えず、落ち込みながら休憩していると当時から働いていた中津から声をかけられる。教師になりたいと思いつつも向いていないと思っていることを打ち明けると、「じゃ教師にはなれないな」本気で目指してる奴はバイトじゃなくて採用試験の勉強をしてる、と言われてしまう。式ができてるなら解けば自然と答えが出る、と励ましの言葉をくれるが文系の自分にはいまいち分からないままだった。しかし、中津の厳しくも優しい言葉に勇気づけられた篠田は中津のようなかっこいい生き方をしたいと憧れを抱くようになっていった。保護者との懇親会にありえない格好で参加しようとする中津を引き留め、マナーとしてネクタイは必要だと自分のネクタイを貸して「中津先生は格好いい格好でいてください」と口を滑らせてしまう。篠田が作業しているといつの間にか職場で寝落ちしてしまい、中津の声で目を覚ます。時間は午前12時半。中津は篠田にネクタイを返しにわざわざ来てくれたのだ。終電が近く、急いで帰ろうとすると、中津から自分がバイトであったことを言われ、それを覚えていたことにびっくりして転んでしまう。

 生徒の柳と成績が下がったことで面談をする篠田。その相談をするため、休日に中津と会う約束をする。当日、強引に誘いすぎたかなとソワソワしていると、「バイトく〜ん」と声がして中津が現れる。カフェに行き、篠田が切り出したのは柳の成績のことだった。なかなか結論を言わない篠田にイラついた中津が怒ると、「僕のことが好きらしいです」「それで…授業に身が入らないみたいで…」と衝撃のことを告白される。断るつもりでいたが、柳には「考えてみるから」と返答したことを言うと中津から蹴りが入り、いい返事が来るか来ないか期待して余計勉強できなくなっていると思うから、講師の視点から言うのではなくて、男としてごめんねって返事してあげれば?と言われる。バッサリと切り捨てると思っていた篠田は、中津のアドバイスに「意外」だと驚く。カフェを後にした二人は解散しようと駅に向かっていた。すると、何かに気付いた中津が急に「千歳、淋しいとか言うなよ!」と抱きしめてきたのだ。しばらくすると「じゃ俺帰って寝ますね」とハグの理由を言わないまま中津は帰ってしまう。実はその柳が自分達二人の後をつけてずっと様子を見ていたのであった。抱き合う姿を見た柳がショックを受けていなくなったことを確認した中津はそのまま解散にしたのだ。後日柳を呼び出し、「好きな人がいるから…」と嘘の断りを入れると、先日の様子を見ていた柳から、中津先生のことが好きだとあらぬ誤解を受けてしまう。慌てる篠田を見て、陰で計画通りだと腹を抱えて笑う中津。

 シャワーを浴びながら中津のことを考えてしまいそのまま自慰をしてしまう篠田。想いは口にしたらもう秘めたものではなくなってしまう、と涙目になる。どうしても中津を意識し続けてしまい、こんなことなら好きだと口にしなければよかったと思ってしまう。一方中津は帰ろうとした時に中等部の鵜沼という生徒が探していたと声をかけられる。担当外なのになぜ、と思いながら外に出るとその鵜沼に突然「弟子にしてください!」と頼まれる。断るも、抱きつかれて先生に憧れてるから彼女でも奥さんでもいいと諦めてくれない鵜沼。ふと上を見ると、その様子を篠田が見ていた。篠田は中津が生徒にプロポーズされていたことにびっくりしつつ、自分がどんな顔をしていたかと動揺してしまっていた。どうせ中津とは一生同僚としてやり過ごすんだと思いながら帰路につく篠田は、「中津先生好きです」「すき」「諦める勇気も伝える勇気もないんです」と一人想いをこぼしていた。翌日、コピー機で印刷をしていると、見てたなら助けてくださいよ、と中津に話しかけられる。動揺を落ち着けようと「弟子入りとプロポーズは断ったんですね」と言うと、「弟子はとってないから。それと、好みじゃないって言ったら諦めた」と自分の肩に顔を預けてきたのだ。どうすればと動揺していると、コピー機の紙が詰まっている音で助けられる篠田は、いつも中津からしていたいい匂いの正体がシャンプーだと気付く。この匂いがするたび胸が苦しくなってこの香りなしでは息ができなくなりそうと思うのだった。

 季節は冬になり、一人で休みの職場に訪れる篠田。まるで逃げるみたいだなと思いながらも退職願を置く。雨が降り始めた外を見て窓ガラスを触りながら、中津みたいになりたかった、応援してもらったのに最初から憧れだけではなかったのかもと考える。何も手につかなくなる前にここからいなくならなきゃと職員室を後にしようとすると、「…手振った?呼ばれた気がして」と中津が現れる。窓ガラスを触っているところを見て勘違いしたらしい。机の上の退職願を見られてしまい、理由を問い詰められる篠田。「中津先生みたいになりたかったです」と続けると、篠田みたいにできた教師じゃない、理屈でどうにかしようとするからよくトラブルになるし感情より結果を優先してしまう、「タイプの違う篠田先生だからこそ何か俺が力になれないかって思ってました」と言われる。一つ言いたいことがあると言われた篠田は、もういいんですと言葉を続けると「文系はこれだから、さっさと結論から言う!!」と言われてしまう。自分の気持ちが知られていると思った篠田は「だから先生が好きになっちゃったんですッ!!」と告白をする。「結局答えなんてないし振られるのもガマンも嫌だから辞めたいんですッ!!」と続けると、「答えなんてないよ」と抱きしめられ、「辞めさせるわけにはいかないよ、振られるのもガマンも御免でしょ?」とキスをされる。びっくりして赤面しながら倒れる篠田に「初めて気が合いましたね、俺も振る気ない」と笑う中津。相変わらず職場では、タイプの違う二人のため衝突することも多いが周りから見てもうまくやれていると思われている。以前雨で布団が濡れてしまったため、クリーニングしている間は中津の家で暮らしていた篠田。今日帰ってくるからと話していると、なんだか回りくどい言い方をしてくる中津。「…つまり結論から言うと?」と聞くと、「早く引っ越しておいでってこと」と言われる。恋愛に「正解」はないけれど、二人で見る景色が素晴らしいものであればこれが「正解」なのかもしれないと思うのだった。

講師としてのやり方や考え方の違いでぶつかってばかりの二人ですが、そんな二人だからこそ違う視点で違う考え方でお互いを補い合えるのかなと思いました。自分の気持ちに気づいてしまってから口に出して泣きそうになってしまう篠田先生がかわいかったです。

著者:厘てく
レーベル/出版社:HertZ&CRAFT /大洋図書
発売日:2015/05/16

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