幼馴染で親友の綾乃はずっと隆成と一緒にいた。しかし、隆成が後を継がないならと別の人間に仕えることになってしまう。それがきっかけで、隆成は綾乃を独占したいという新たな感情に目覚めてしまい、それは綾乃も同じようで──。

あらすじ

──きみはこれからも“ともだち”? それとも──……。
ヤクザの家系に生まれた隆成は、幼い頃から一般家庭に憧れていた。そんな隆成の隣には、側仕えかつ幼馴染で、親友の綾乃がいる。隆成が組を継がなければ、綾乃は別の人間に仕えることに……。組を継ぎたくない気持ちと、綾乃を自分以外につかせたくない気持ちの間で揺れる隆成。そして綾乃も、隆成に特別な感情を抱いていることを隠していて……?
献身的な側仕え×鈍感な跡取り息子の、ときめき溢れる幼馴染ラブストーリー。

ネタバレあり感想まとめ

 ヤクザの家に生まれた隆成は、幼馴染でお付きの綾乃と同じ家に住み登下校をしていた。”普通の家庭”に憧れていた隆成は家業を継ぐ気はなかったため、ある日突然綾乃を”家業を継ぐ”別の人に付かせると言われてしまう。綾乃とずっと一緒だと思っていた隆成は普通の生活と綾乃のどっちを取るか選択を迫られることに。

 するとさっそく紬組の息子・紬円加が自分と綾乃と同じクラスに転校してくる。帰路、やっと二人になれると思ったのも束の間、挨拶がしたいと家まで来た円加は、そのまま祖父に隆成が決断を下すまでの間居候させてください、と言う。そうして綾乃と二人の日常に円加も加わることに。学校でも家でも円加の世話をする綾乃とそんな綾乃と楽しそうに話す円加を見てもやもやしてしまった隆成は綾乃に冷たい態度をとってしまう。いつも綾乃と二人で行く学校も一人で、学校でも綾乃以外の友達と過ごすように。綾乃のいない日常が憧れていた“普通”であるのに落ち着かなさを感じるように。最近の様子を綾乃に聞かれた際、自分よりも円加が継ぐ方が適任だと思っていること、もうすでに跡継ぎが決まったみたいに世話をする綾乃を見てもやもやしていることを告げ、自分が返事をするまでは綾乃は自分のお付きなのに!とそのまま去ってしまう。そんな隆成の言葉を聞いて顔が赤くなってしまう綾乃。

 ある日、隆成と円加、綾乃は祖父に呼び出され、佐伯組で禁止されているクスリを組の人間がうちのシマで売買していることを伝えられる。二人が同処分を下すか調査と一緒に検討しろ、と言われる隆成と円加。綾乃は二人のサポートをお願いされるが、前のことがあった隆成は「サポートが必要になったら声かけるから」と一人で調査をすることに。二人がそれぞれ調べていると、この件の首謀者は祖父や自分たちのそばで組をずっと支えていてくれた吉田であることがわかる。祖父にその件を報告した二人。円加は、吉田は優秀な人材でありこれまでの貢献度から考えても多少の慈悲があってもいいと、隆成はクスリをご法度としてやってきたことを知りながらも手を出してくみを裏切ったのだから、どんなに慕っていても組の一員である以上親が示しをつけて制裁の上破門にすべき、と判断を下す。その判断を聞いた祖父は隆成に組を継ぐ器があると判断する。結局この事件は祖父が作り上げた架空の事件であることがわかり、隆成も自分の判断や円加の意見を聞いて、組を回していく上での判断が根付いていたことと自分にとっての“普通”はこの家であることに気付く。結局自分が組を継ぐことになるのだが、「綾乃がついててくれるならこれでいいや」と言う隆成。綾乃が裏切ったときも同じように判断しなけけばならないのだが、「綾乃は俺を裏切らないでいて」「綾乃は俺の心臓でいて」と言う隆成に気持ちが抑えられず、「あるんです、ひとつ。若にとってきっと裏切りになっちゃうこと…」「おれずっと、若がすきなんだ」と綾乃は告白してしまう。

 小さい頃、自分が風邪をひいたとき、部屋には行かないようきつく言われていたはずの隆成が来てくれて、寂しいだろと面倒を見てくれたことがあった。案の定隆成は風邪をもらって吉田にきつく怒られることになるのだが、この件から親に言われてお付きになると思っていた綾乃は、怒られるのがわかっていても優しくしてくれる隆成のそばで過ごしていきたいと思うように。だが、一緒に過ごしてその優しさに触れるうちにそれを独り占めしたい気持ちと隆成のことを邪魔したくない気持ちでいっぱいになってしまう。ずっと言うつもりのなかった気持ちを伝えてしまった綾乃は「ちゃんと今まで通りするから忘れて」と言うが、「別にいいよそのくらい」と返してくる。俺も綾乃に全部くれって言ったようなものだからフェアじゃないし、綾乃に全部あげたっていいと思ってるよと言う隆成。長年の想いが突然実ってしまったことで「都合がよすぎる……」と言う綾乃に、「こんなことわがままにだってならないだろ」と言うのだった。

 翌日いつも通りに接してくれる隆成に、優しさでそうされているのではと思った綾乃は、昨日伝えたことを隆成がちゃんとわかってないと思ったから弁えようと思ったことを言うと、気遣いではないことを態度で示したいからここで踏み込んでキスをしよう、と言い出す隆成。そうして二人はキスをする。家に帰ると今日学校を欠席していた円加が居候していた佐伯家を出るため荷物をまとめていた。円加が使っていた離れで綾乃は隆成のどこまで踏み込んでいいか聞き、男同士のやり方などを見せる。痛いだろうし上手くできるかわからないからできないかも、と言う隆成に委託しないようにするから「いつか俺に抱かれてくれる…?」と言う綾乃。いいよ、と返ってきた返事に思わずガッツポーズをする。抜き合いをしている最中自分の心配ばかりする綾乃に対して「そんな心配ばっかしなくても平気だから」「ちゃんと俺も綾乃がすきだから」と伝える隆成。二人の関係性に悩む綾乃だが、俺ららしくやっていこうと言う。この関係性にひとことで名前をつけるのは難しいけれど「一緒に生きるひと」(ともだち)がいいかもしれない、と思うのだった。学校も転校すると思っていた円加は居候が終わっただけでこっちに残ることがわかる。

 時は経ち、隆成と綾乃は正式に組を継ぐ準備や挨拶で大忙し。そんな中で組や隆成の手伝い、家事の大部分をこなす綾乃をあらためてすごいと思う隆成。バスタオルを脱衣所に置きにいくと、お風呂に入ろうとする綾乃と遭遇。綾乃が自分の代わりに入れた刺青を見る隆成に、罪悪感で縛ってるみたいで嬉しいと言う綾乃。それからも多忙な日々を過ごした二人は、円加の手伝いで久しぶりに休めることに。お風呂に入り、部屋着に着替えて休みにやりたいことを話しながらお酒を飲む二人。頑張った自分にもご褒美が欲しいという綾乃にキスをして体を重ね始める。隆成が服を脱ぎ出すとその胸には綾乃と同じ柄の刺青が。押しつけではなく自分も一緒に背負いたかったこと、綾乃と同じ柄で心強さを感じること、自分に刺青があることを知っているのは綾乃だけ、と伝える隆成。「刺青…いつか消したりしないでよね…」と言う綾乃を、「頼まれたって離してやんねー!」と強く抱き締めるのだった。

 幼馴染に主従に親友など二人の関係性や話がてんこ盛りな感じかと思いきやとても上手くまとまっていて読みやすかったです。今まで綾乃の片想いで一生平行線かと思いきいや跡継ぎ問題での第三者の介入によって二人の関係性が変化していくのは王道ですが、やはりいいなあと思いました。一緒に過ごしていく中で、隆成に対してこの感情を抱いていいのかと葛藤を続け苦しんできた綾乃でしたが、最後には報われてよかったと安心しました。

著者:那梧なゆた
レーベル/出版社:eyesコミックス/集英社
発売日:2022/05/25

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