レムナント1─獣人オメガバース─

 日々体を売って生活しているオメガのダートは、自分の暮らす教会が発情期が来たオメガを闇ルートで売買していることを知ってしまい、妹と一緒に早く逃げるため危ない仕事に手を出してしまう。そこで運悪く発情期が来てしまい、意識が朦朧とするダートを助けてくれたのは黒い狼の獣人で──!?

あらすじ

【望んでいなかった「魂のつがい」】「おまえに拒否権はない」両親を亡くし、妹と一緒に教会で育ったオメガのダートは、発情期が来る前に独り立ちしようと身体を売って稼いでいた。そんな時、教会が発情期の来たオメガの子供を闇ルートで売っていることを知ってしまう。一日も早く妹を連れ教会から出ていくため、ダートは誘われていた危ない仕事をすることに…。しかし、運悪く発情期が訪れてしまう。初めての発情期に意識を失いかけていたダートだったが、その時、目の前に黒い狼の獣人が現れ――!?

ネタバレあり感想まとめ

両親を亡くし、教会で妹と共に育ったオメガのダート。十八になるまでは教会にいられるのだが、オメガだけは「発情期」を迎えた瞬間に教会の決めた信者の元へ嫁がされてしまう。そんなことになる前にお金を貯めて妹と共に教会を出て密かに暮らすのが目標だった。そんな時、同じく教会で暮らすオメガの友人・フリオが発情したまま闇ルートで売買されるところを目撃してしまう。その会話から、同じように自分達も発情期が来たら売られてしまうことを知るダート。今ままで発情期になって、「家族ができる」と信じて出て行った人たちのことを思い出す。ショックのまま自分の部屋に帰ると、そこには発情期の匂いをわずかに漂わせた妹がいた。このままでは時間がない、と自分の母親の墓から泣きながら金品を抜いていると、背後から何者かに話しかけられ、これで薬を買えと銀貨を数枚渡される。初めて誰かに助けてもらったダート。ある日、知り合いのおじさんから相当な金になる仕事があると言われ、請け負ってついていくと、そこには繋がれた獣人がおり、オメガの人間と交配させて生まれたアルファを特権階級に高値で売り捌くというものだった。仕事を断ろうと思っていると憲兵が現れ、咄嗟に逃げようとする。しかし運悪く、発情してしまう。そこに現れたのは、あの日お墓で助けてくれた獣人だった。獣人の前で動けなくなるダートに暴言を吐きながら屋敷に連れ帰る獣人は、発情期の匂いに誘われるままダートを抱いて番となってしまう。

 あまりの気持ちよさに気絶してしまっていたダートは、妹のためにこの場所を抜け出して教会へ帰ることに。教会に戻ると、神父に「どこぞで「番」の契約を結んできおったな、ふしだらな子供だ…!」と罵られてしまう。妹も目の前に現れたが、「そんな人知らない」「私を裏切って「番」を作るなんて…嘘つき」と言われ、教会を去るダート。母親の墓の前で俯きながら泣いていると、先ほどの獣人が迎えに来る。いいから黙って着いてこいと言われ、連れてこられたのは豪華な屋敷だった。入ると、その獣人の従者がおり、その獣人の名前が「ジュダ」だということがわかる。

 屋敷に着き、お風呂に入れられるダート。その後、ジュダとその従兄であるルアードと話し合いをすることになるのだが、開始早々「番を解消する方法はないのかって聞いてるんだ!」と声を荒げるジュダ。それを聞いたダートは「それはこっちの台詞だろうが、勝手に襲って無理矢理「番」にしやがって」と反論するが、ジュダの自制が効かず噛みついてしまった、という発言から二人がおそらく「運命の番」であることが分かってしまう。運命の番とは恋愛感情抜きで、魂で繋がっているため、どんなに憎み合っていようと離れられない運命にある。そういったことからジークフリード家としてもダートを解放するわけにいかず、ここで一族の世継ぎを産むことになってしまう。その後話し合いは続いたが、全然耳に入ってこないダート。ただ分かったのは、ジュダは自分のことを「拒絶」していることだけだった。自分の人生が自分の手の及ばないところで動いていくのが怖かったダートは、どこにいても同じ「道具扱い」なら身体でもなんでも売って生きて行きたいと思う。屋敷を脱出すると、教会の木の下に埋めていたあの日ジュダにもらった銀貨を掘り出す。すると後ろから誰かに殴られ、襲われてしまう。目を開けるとその相手は教会の神父であったが、番の契約を結んでしまったため体が拒絶反応を起こし尋常でない気持ち悪さに襲われるダート。するといきなり神父が倒れ、その先にはまたもやジュダがいた。神父をタコ殴りにするジュダ。そして、ダートに「本当ならお前がどこへ行こうが誰にヤられようがどうでもいい」「だが覚えておけ、その「身体」はもう俺のモノだ、俺の「印」が付いた体を他の誰にも触らせるな」と言うのだった。屋敷に戻ったダートは、不快な匂いがついたと言うジュダに抱かれるのだが、先ほどと違い、気持ちよさを感じる。「自分」に興味がなかったとしても、「俺のモノだ」と言われたことに勝手に体が喜んでしまった。

 翌日目を覚ましたダートは、首についた番の痕を隠すために首輪をすることに。妹を助けるため、外に出ようとすると止められるダート。自分のいた教会が人身売買で目をつけられていたことを知りながら助けてくれなかったジュダに苛立ちが募り反抗すると、閉じ込められてしまう。お付きのアライグマの獣人・バロンにこの屋敷のこと、この屋敷に子孫を残すために滞在している由緒正しい他のオメガがいることを聞く。屋敷を探索する中でもう一人の人間のオメガの子供・カイに出会う。オメガであるのに勉強をするカイを見て、自分には知らないことばかりだと思うダート。屋敷に滞在しているオメガに憎まれ口を叩かれ、見下される。オメガ以外は全員敵であり、もう何も信じないとしていたのに同じオメガにさえ踏みにじられるなんて思わなかったとショックを受ける。他のオメガと喧嘩になったことでジュダに釘を刺されるが、最初からうまくやれると思っていなかったジュダ。ありがたくもこの俺の「番」なんだからな、妬まれて当然だ、と言うジュダにイラついたダートは冗談じゃないと口にして、自分のことを「番」だと思っていないジュダに対して取引を持ちかける。それは、自分に金を払って恋愛感情なしで抱く、と言うモノ。金さえ払えばいつどこでも抱いていいという言葉を聞いて、すぐさまジュダはダートを抱くのだった。

 顔を隠し、町で妹を探すダート。探している途中でベータの男に喧嘩を売られ、最終的にはボコボコにするが殴られてしまう。ベータの中には特別な結びつきを持つアルファやオメガを毛嫌いする人もいるが、彼らは抗おうとしても抗えない支配される怖さを知らないのだ、と思うダート。子供ができてしまえば取引が終わると思ったダートは避妊薬を飲み続け、副作用を心配されてしまう。最近妹を探して出歩いてばかりのダートに対してイライラするジュダは、ガキ相手に何やってるんだ俺は…と思うが、戻ったらすぐに知らせろと頼む。街から帰ってきたダートは部屋が荒らされ、発情の抑制剤が盗まれていることに気づく。発情を抑える必要はないが、万が一の時に備えて取り返しに行くと他のオメガには発情誘発剤だと思われていたようだった。早く身籠もって自分達に勝とうとしている、いつも可愛がられているくせにまだ足りないのか淫乱な野良犬!!と急に襲われ首を絞められるダート。自分に嫉妬していることを理解したが、次の瞬間足を滑らせて頭を強く打ってしまう。ジュダの所有する秘密の別宅で目を覚ましたダートは首を絞めたオメガにやり返そうとするが、そいつが屋敷から追い出されたことを知る。首についた痕を見たジュダは、ここまでされて見逃すわけにはいかない、「触らせるな」と言ったが傷もつけるな!「俺の身体」なんだぞ分かってるのか?と言う。その言葉にドキッとするダートだったが、「ただでさえ野良犬呼ばわりされているのにせめて身綺麗にしてもらわんと一族末代までの恥になる」との言葉で台無しになるのだった。そのままジュダに抱かれそうになるが、いざと言うところでジュダのパートナーだというベータの人間・ウィルが入ってきてしまう──。

 今回は1巻と言うこともあり、途中で終わってしまいましたが続きも読んで記事にしていけたらいいと思います。お互いのことを全く知らないまま番になってしまった、というパターンは初めて読みましたがこの先二人が心から愛し合うときは来るのだろうかと今からドキドキです。これはペンデュラムという本編で出てきたカップルの番外編の話なのですが、本編の方ではここで出てきたカイくんが主人公のようです。本編も機会があれば読んでみたいと思いました。

著者:羽純ハナ
レーベル/出版社:ダリアコミックス/フロンティアワークス
発売日:2017/07/22

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