俺が君の本命じゃなくても

同僚の北山に恋をしている吉住は、ある日北山に同じシェアハウスの男が好きだと告白されてしまう。自分じゃないなんて、と吉住もそのシェアハウスに引っ越して恋敵を潰す決意をする。

あらすじ

同僚の北山を密かに想い続ける、リーマン・吉住。その北山から突然告白された!「同じシェアハウスに住んでる男を好きになったんだ。小嶋っていうんだけど」!!!!???? まさかの俺じゃない…だと―――!? しかし、めげるどころか生来の負けん気に火がついた吉住は、恋敵をつぶすことを決意。さっそく件のシェアハウスに引っ越すが、そこには恋敵の小嶋に加えいけ好かないイケメン・千歳もいて、思い通りにことが運ばず…? 吉住は恋敵に勝てるのか!? 様々な思いを抱えた男4人が繰り広げるラブ・カルテット。

ネタバレあり感想まとめ

 同僚の北山に恋をしていた吉住。男が好きだとカミングアウトされ、さらに北山が住んでいるシェアハウスの男だと明かされる。マンションが水漏れだと嘘をついてそのシェアハウスに入居することに成功した吉住は北山の片想い相手・小嶋との関係を妨害することに。北山と一緒に荷解きをしようと小嶋にお使いを頼むが、北山は小嶋と一緒にお使いに行ってしまう。もやもやしながら風呂に入るともう一人の住人・千歳と全裸で遭遇してしまう。初日から、シェアハウスでの生活はストレスが多そうだと思う吉住だったが北山の寝起き姿が見れたことで嬉しくなる。小嶋は家でしか一緒の時間がないため、同僚のポジションを使って攻めていこうと決意する。すると、自分の想いが通じたのか、18時にリビングに来てほしいと北山にお願いされる。緊張しながらも約束の時間に行くと、それは自分の歓迎会だった。バーテンダーをしている千歳がお酒を振舞ってくれることに。北山と話すつもりだったが、一杯飲んだだけで酔った小嶋に取られてしまい距離を詰めることができずにいた。北山が買い出しに行ったため、小嶋と話す吉住はマウントを取るが、話を聞く小嶋の様子から小嶋も北山のことが好きなのではと分かってしまう。小嶋に合わせ酒を飲んでいた吉住は酔いが回ってしまうが、小嶋は実は酒豪であり自分だけが酔ってグダッとなってしまう。帰ってきた北山と両想いになりキスをするタイミングで異変に気づき目を覚ますと、さっきまでのは夢であり自分がキスしたのは千歳だった。北山の名前を呼んでいたのを聞かれてしまい、好きバレして焦る吉住に千歳が提案したのは「共闘」だった。千歳が好きなのは小嶋の方であるため、お互いに本気で北山と小嶋を落としにかかることを約束する。

 会社帰り、二人での買い出しを楽しんでいた吉住だったがスーパーで小嶋に邪魔されてしまう。これからどう口説いていくのか千歳と作戦会議をしていると、生活リズムのすれ違いでどうアピールするかが課題の千歳。そんな千歳に提案したのは、みんなで職場に行ってバーテンダー姿のかっこいいところを見せるものだった。北山が電話で抜けてしまったため残念そうにしていると、小嶋に二人の関係を羨ましがられ喜ぶ吉住。そこに割って入ってきたのは千歳で、小嶋が前から座りたがっていたカウンター席に案内する。千歳と楽しそうに話す小嶋の姿をみて「俺にだって飲みたい時ぐらいあるよ」といつもよりもハイペースで酒を煽る北山と、それをみて吉住は自分の知らない北山の姿に少し恐怖を感じる。案の定潰れてしまった北山、千歳の提案で吉住と外で涼むことに。落ち込む北山に、いいところをずっと隣で見てきたからと伝えると、急に抱きしめられるがそれは寝て力が抜けてしまったからだとすぐにわかる。離れようとすると「小嶋…」と呼ぶ声を聞いてしまい、一番近いはずなのに自分を見てくれない北山との距離をずっと遠く感じてしまう。

 シェアハウスの四人で遊園地に来ていた。ジェットコースターに乗ろうと言った小嶋だったが、北山は絶叫系が大の苦手であるため吉住は自分と一緒に待とうという。しかし生死を振り切って無理して乗ってしまったため、休む北山を吉住は介抱することに。無理して迷惑をかけた自分を励ましてくれる吉住に感謝する北山だが、打算的なままでは隣にいる資格はない、と告白しようとする。しかし言いかけたとこで北山に「そろそろ行こうか、正直気が気じゃなくてさ」「小嶋、千歳君と二人でどうしてるかなって」と言われてしまい自分では小嶋の代わりになれないことを改めて突きつけられてしまう。合流した後、小嶋は姑息な自分と違って本当にいいやつで純粋で愛される、自分が北山の立場でも小嶋を選ぶだろうと千歳に言う。どこかに歩いて行ってしまう千歳に、八つ当たりしたことの申し訳なさを感じているとソフトクリームを買ってきて差し出してくれた。「そうやって楽しそうな方が北山君も喜ぶんじゃね」と言われ、意識しすぎて前のように純粋に二人でいることの楽しさを忘れていたことに気付かせてくれる千歳。

 吉住の誕生日、北山と二人だけでお祝いするはずだったのだが当日になって「小嶋も参加するって」と言われてしまう。二人きりになれる貴重な日を台無しにされてしまい、今日くらい北山を独占させてくれたってと思っていると、間違えて「残業で中止になった」と送るはずのなかったメッセージを送ってしまう。即レスされてしまい困った吉住は千歳に助けを求める。嘘がバレないよう千歳が小嶋を連れ出してくれることになったため、千歳に感謝しつつそのことを北山に伝えると残念がっていた。名目上の残業を終え、飲みに行こうすると警察から空き巣が入ったと連絡が入る。帰って早々小嶋が空き巣と鉢合わせしてしまったことを心配する北山。そこで吉住が二人についた嘘も同時にバレてしまう。嘘をついた理由を聞かれ、小嶋のことを疎ましく思っていたことと自分が北山を好きなことをつい口に出してしまう。「何言って……嘘だろ?それ」と予想はしていたものの北山からいざそういう反応が返ってきたことで、吉住は部屋を飛び出してしまう。その様子を見ていた千歳は北山に事情を聞くことに。「──もう俺の知ってる吉住じゃないみたいだ」という北山に、確かに嘘はまずいけど自分も当日になってから小嶋が参加することを報告したのだから自分の気持ちを優先したのはお互い様だと言う。自分の部屋に閉じこもっていた吉住の元に「仕切り直そうぜ誕生日」と酒を持った千歳が現れる。自分の気持ちは正しいと思っていたけれど、だんだん真っ黒な自分に気付きみんなを傷つけてしまったこと、もっと最初から素直になっていればこんなことにはなっていなかったと反省する吉住。まだ千歳には希望があるのだからと応援すると、キスをされ「…共闘はもう終わりだ」と告げられる。

 どう言う意味か聞く吉住に「…考えといて」と言ってその場を去る千歳。会社の屋上でそのことを考えていると、北山が現れる。今まで吉住に甘えていて自分の話を聞いてもらってばかりだったから吉住の気持ちに気付けずたくさん傷付けてしまった、と謝られる。自分の方が悪い、長年の友情を愛情と勘違いした、と自分でもびっくりするくらい4年の片想いをあっさり流してしまう吉住。休日、千歳に起こされ目を覚ます。休みを取ったから一日付き合えと二人きりでドライブに行くことに。失恋したばかりで楽しめるわけ…と思っていたが、海に連れて行ってもらい売店で一緒にジュースを買って飲んで話して、と普通に楽しめている。もし家にいたら小嶋と北山への罪悪感でいっぱいになっていただろうことを察して千歳は連れ出してくれたのではないかと気付く。「俺と二人は新鮮だっただろ」と手を繋いだまま離そうとしない千歳は「──気付いたんだけど、俺はこっちの方がしっくりくるわ」と告げる。小嶋が好きだったのではないかと尋ねる吉住に対し「目が離せなくなった、小嶋以上に」と告白する。自分と同じようにうまく立ち回れると思っていたらそうではなく駆け引きもできない吉住を見て、吉住の「好き」という感情が重さも熱量も自分と違うことに気付き色々見ていたら「北山くんには渡したくない」と思ったため「共闘はもう終わり」と言ったのだと明かす。日が落ちてきたため家に帰ろうとするが、あの二人に会いたくない気持ちもあり帰りたくない、と告白する吉住。「隙みせていいのかよ、付けこまれるぞ俺に」と言う千歳に「…いいよ」と返事をし、場所をホテルへと移す二人。吉住は男性との経験が0であったが、千歳は嫌と言うほど甘やかすつもりだったと丁寧に吉住のナカをほぐしていき、二人は初めて交わる。その中で北山のような人間はいないと思う気持ちは変わらないもののその夢を見ている間、現実でその心の隙間を埋めてくれたのは千歳だったと思う。事後のベッドで、吉住の中にあった4年分の気持ちと同じものにはできないが、一緒に埋めていこうと優しく告げる千歳。

 二人でシェアハウスに帰ってきた吉住と千歳。ドアを開けると、不審な様子の小嶋と北山。何か進展があった様子だった。小嶋にこの前のことを謝罪する吉住。そこで、北山と小嶋が来月旅行に行くからと家の留守番を頼まれる。千歳にそのことを話したが、千歳はその時期仕事が忙しいらしい。いよいよその旅行の日になった。千歳とは最近すれ違いが続いているため少し寂しさを感じる吉住。北山のことを諦めたとはいえ、旅行に行く日を忘れていたし不思議とショックを感じなかった自分はドライなのではないかと思う。千歳は仕事に行ってしまい暇なので少しイタズラをして待つことにする。仕事から帰宅した千歳が目にしたのは遊園地で吉住が身につけていたカチューシャだった。なぜか千歳の部屋にあったものを拾ったのだ。落ち込んでいると思っていたが元気そうな吉住を見て「気にして損した」と言う千歳。その言葉を受けて自分が一日中千歳のことばかり考えていたこと、北山への想いが消えた訳ではなく、それ以上に千歳の存在が大きくなっていったことに気付く。「この前言ってたやつ、もうかなり埋まりかけてる…って言ったらどうする?」と千歳に言うと、千歳は吉住をベッドに押し倒す。そこで、千歳が急いで家に帰宅したためボタンを掛け違えていることを知る。千歳は吉住と二人になるのが楽しみで、今日も早く仕事に行き早く帰ってきたのだ。前回シたときは初めてだったため、加減されていることに気付いていた吉住は「今日は奥まで来て」と煽る。事後、「埋まるどころか溢れたかも」と言う吉住に「責任とるわ一生」とプロポーズまがいのことを言う千歳。旅行から帰ってきた小嶋と北山。二人が買ってきたお土産を使ってバーベキューをすることに。北山と結ばれたことを祝福する千歳。小嶋はずっと吉住と北山の仲を邪魔していたことが明かされ、「かわいいだけじゃなかったこの男!」と吉住は感情を丸出しにする。北山は、気を遣って小嶋と家を出ようか?と提案するが、「俺はこの生活好きだよ」と気にしていない様子で安心する。吉住と千歳は手を繋ぎながら買い出しに向かうのだった。

よくBLでは当て馬役には恋人ができないまま終わることが多いですが当て馬役の吉住視点で物語が進められていて最終的には全員が幸せになれてよかったです。北山が事情も知らず小嶋を庇ったり真っ先に安全を確認する様子を見て吉住と同じくひどい気持ちになりましたが、その「好き」の気持ちで葛藤する吉住の人間らしさが溢れていました。

著者:加森キキ
レーベル/出版社:Ficus /ソルマーレ編集部
発売日:2022/02/12

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