昨日をもう一度

母校で高校教師として働いている高森はある夏の日に、高校時代に好きだった同級生の神藤と再会してしまい、そこから二人の歯車が少しずつ動き始める──。

あらすじ

母校で高校教師として働いている高森はある夏の日に、高校時代に好きだった同級生の神藤と再会した。
高森が神藤への気持ちを忘れられないのと同じように、神藤もまた、昔好きだった人を忘れられず悩んでいるらしい。神藤の想い人が実は”教師”だということを知っていた高森は、その身代わりとして抱いてくれと言い出して…

ネタバレあり感想まとめ

 母校で高校教師をしている高森は、同僚の女性に誘われた合コンの会場で働いていた店員がかつてのクラスメイト・神藤で思わず声をかけてしまう。合コンが終わり解散しようとすると、神藤から声をかけられる高森。神藤の要望で2人で母校に入る。高校時代、神藤は静川という女性教師と付き合っていたことを打ち明ける。高森はその事実を高校時代から知っていた。神藤に行きたいところがあると言われ、ついて行った先は静川との思い出の部屋である社会科教室。机に内緒で残していた、先生とシた数を数えていた線を見つけて「何にも変わってなくて笑える」と言う神藤。最低なことをしたから急に捨てられたのではないか、自分はあの時どうすればよかったのか、と高森に聞いてくる。神藤はずっと静川先生のことを引き摺っている様子。そんな神藤の手を取って「そんなことない!」静川先生もその時は神藤と一緒にいることを選んでいたのだから幸せだったはずだ、そういう思い出を時々思い出したりすることは悪くない、と自分と重なる思い出をもつ神藤を励ます。すると、拗ねて泣きながら「お前に何がわかるんだよ」「俺と先生のことなのに」言う神藤。子どもみたいだと思いながらも「わかるよ、俺だって先生だもん」と返すと、「じゃあ代わりになれよ」と突然キスをされる。

 実家の母から自分が着ていた学ランがこのタイミングで送られてくる。自分はあの頃きっと神藤のことが好きだったんだろう、と思い出す高森。もし前に言われた「代わり」が静川先生の代わりなら付き合うのだろうかなどと色々考えていると神藤にばったり会ってしまう。高森が生徒に見つかってしまったため、場所を変えて高森の家で話すことに。あの時、久々の学校で色々思い出してしまい勢いでキスしてしまったことを謝る神藤。キスすら初めてだった高森が怒ると、「何でもします!」と言ってくれたため、神藤に自分の学ランを着せる高森。実際に着てもらい感動していると、いつの間にか勃起してしまう。生徒と問題を起こさないために代わりになってよ、と神藤は生徒の代わりで自分が静川先生の代わりとして抱いてくれと自分でも馬鹿げた提案をする。「…ほんと頭おかしんじゃねーの、お互いにさ先生」と言いながらも高森のことを何度も「先生」と呼びながら抱く神藤。お互いベッドにぐったりしながら静川先生との思い出の話をする神藤。結局自分は「先生と」という背徳感に酔っていたのではと言う。

 それから奇妙な関係は続いていて、何度も体を重ねる二人。趣味の観葉植物に使う液体肥料がない、と高森が言うのでホームセンターに一緒に買いに行くことに。高森が教師になった理由は、両親が教師だったため成り行きでなったらしい。別にやりたいこともなかったし、なったからにはそこで頑張るしかない、と言う。その後もいろいろ聞いてくる神藤にどうしたんだというと、静川先生のことが好きだったけどちゃんと知ろうとしなかったから、高森がちゃんと人間なのか確かめたくなったらしい。神藤は今実家に住んでいてフリーターをしているそうだ。高校時代のショーケースの中の宝石みたいだった彼を思い出しながらも、今の神藤はすっかり擦れて路傍の石って感じ、思い出は思い出のままの方がいいかもね、と冗談を言う高森。神藤は静川先生に「私のことを知れば知るほど好きじゃなくなってくと思うよ」と振られていた。静川に突然突き放されてしまったため家まで押しかけた神藤は、家に入れてもらった後も一向に突き放す先生に対して暴言を吐いて襲ってしまう。その時に一瞬「孕んじまえ」と思った情景と今高森と体を重ねている景色が重なる。自分が静川先生に酷いことをしたことを会えたら謝りたい、と高森に言うと静川先生はまだ自分達の母校で働いていることを明かされる。

 なぜもっと前から言わなかったのか尋ねられる高森は、何でだろうと心の中で思う。静川先生も昔のままじゃないよ、というと今のダメな自分のままでいるのはダメだから会いたいという神藤。会えるように話してみる、とは言ったものの何だかイライラしてしまう。学校で静川先生と話せる機会を伺っていると、後ろから生徒に呼びかけられる。生徒が問題集を進めていることを偉い、と思わず頭をポンポンしてしまい謝ると「好きです!」と突然告白されてしまう。必死の勢いで迫る女子生徒を見て、高校生ってこんなに子どもなのかという思いを抱く。気持ちは嬉しいけど…と断ると卒業したらいいのかと迫られ焦っていると後ろから静川先生に声をかけられ何とかなる。「ああいうのはもっと強めに断らないと後々困るのは自分ですよ」と言われあんたが言うか?と思いつつも神藤のことを切り出し会いたがっていると言うと動揺もせずすんなりと承諾される。いよいよ約束の日、緊張する神藤を励ますも、様子が気になりこっそり同じカフェにはいる。現れた静川先生は、少し話した後神藤に「前ん前変わってないんだね、笑っちゃった」と頭をポンとして「さようなら」と立ち去ってしまう。二人で飲みながらその話を聞くと、静川先生はもうすぐ結婚するらしい。その人がやきもち焼きだから職場では女っ気をなくしているという惚気まで聞かされていた神藤。静川先生の人生に自分は一ミリも関係なくて自分だけが引きずっていたことにバカみたいだと豪快に笑って吹っ切れようとする神藤。そんな様子を見て高森はビールを一気飲みして、高校時代神藤が好きだったこと、制服を着せてセックスしていたのは趣味ではなく自分の叶わなかった夢を叶えるためだったことを明かす。今の神藤はどうでも良くて思い込もうとしたが流石に幻滅した、もう静川先生のことはカタがついたのだから自分とももう会う必要はないだろうと店を出ていく高森。店を出た後高森は過去のことをうだうだ引きずっているのは自分だ、またあの二人が会ってしまったら神藤の時間が動き出しいてしまうことが怖くて言えなかったのだ。「一人だけスッキリした顔しやがって…」と泣き出してしまう。一方店に残された神藤は、「用無しとか勝手に決めつけやがって…んなわけねーだろっ」「…ん?」と自分の気持ちに気付いたようで顔が赤くなる。

 翌日の学校で、高森は高校時代の神藤の影を見てしまう。前を見ると、自分に告白してきた女子生徒はクラスメイトに告白されて付き合うようになったらしい。内緒ね、という様子でこっちを見ている。みんなが前に進んでいるのに自分だけ取り残されて神藤までも前に進み始めてしまった焦燥感を感じていた。一方の神藤は働いている派遣会社で、最近明るいから気持ちの変化でもあったのかと聞かれ、ちょっと吹っ切れて心がウキウキする、と答える。同僚との会話の中で、「恋」という言葉が腑に落ちたらしく自分が恋していることに気付く。神藤は何度も高森に電話をかけるが繋がらない。高森は一人部屋の中で綺麗なままの思い出を残していくことは何も悪くないのにどうしてこんなに苦しいのかと思っていた。するとピザ屋を装った神藤が訪ねてくる。一旦断るとドアを蹴って学校の近所なのに外で「散々やっといて一方的にそれはねーだろ!!」と叫び始めたので仕方なく家に入れることに。「僕のことなんかもうどうでもいいだろ」と言うと「俺一言でも言った?もう会わなくていいなんて」「やめたくないんだけどこっちは、もう高森くんのこと好きになっちゃったから」と突然告白をされる。ちょっと前まで過去を引き摺って自分と同じだったのに一人だけサッパリしてズルい、と言う高森に、「…ズルいって子供じゃないんだから」とキスをする神藤。ベッドに座らされ押し倒され舌を絡められ、「お前もうさ、俺のこと好きになっちゃった方が幸せになれると思うよ、だからさちゃんと今の俺たちでしよう」と言われ、「好きじゃない」と言いつつも神藤に懐柔されていく。「じゃあ好きになって」と言って高森を抱く。翌日、学ランを捨てて思い出の精算をする高森に花火をやろうと話しかける神藤。神藤が買ってきた花火はしけっていて唯一火がついた線香花火を楽しむ二人。神藤に頭を寄せる高森は「…誰かに見られたらマズいんじゃないの」と言われるが「大丈夫だよこれくらい」と返す。

お互いに高校時代に引きずられたまま大人になってしまった二人が偶然交わることによってその思いを清算していくのが綺麗な終わり方でよかったです。神藤のことを手伝いながらも自分の気持ちに気付き、過去を精算した神藤を見て辛くなってしまう高森の気持ちがこちらにまで伝わってきました。その高校時代の思い出が詰まった学ランを捨てるシーンがより一層印象的に見えました。

著者:らくたしょうこ
レーベル/出版社:H&C comics /大洋図書
発売日:2018/07/02

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